「ついで買い」というものについて

書店減少の対策としてよく掲げられるこの「ついで買い」というもの。

このテーマ、軸がしっかりしていないと意味がないのではないか、ということをつらつらと。

 

 

大きく分けてふたつ方向があると思うんです。

①「本を日常的には買わないひと」に「ついでに」買ってもらう

②「本を日常的に買うひと」に「ついでに」買ってもらう

 

もっと細分化してもいいと思います。

①ー1「本を日常的には買わないひと」に「本屋で」本を「ついでに」買ってもらう

①ー2「本を日常的には買わないひと」に「本屋ではない場所で」「ついでに本を」買ってもらう

①ー3「本を日常的には買わないひと」に「本屋で」「ついでに本ではないモノを」買ってもらう

②ー1「本を日常的に買うひと」に「本屋で」本を「ついでに」買ってもらう

②ー2「本を日常的に買うひと」に「本屋ではない場所で」「ついでに本を」買ってもらう

②ー3「本を日常的に買うひと」に「本屋で」「ついでに本ではないモノを」買ってもらう

 

まだあるでしょうがとりあえずここまでで。

 

これら細分化され得る「ついで買い」に対して、それぞれの店舗・取次・版元がどの「ついで」を狙っているのかを明確にしないといけないと思います。

 

ここからはよりいっそう個人的な感覚の話になりますが

僕がもし本好きの人間でなかったとすると、「とんでもないほどの魅力がなければ」本のついで買いなんかしません。

 

どういうことかというと

例えばショッピングモールに服を買いに行ったとして、服屋にとりあえず本が置いてあったとしましょう。

とんでもないほど魅力がなければ買いません。というより目線が行かない可能性の方が高い。

あるいは本屋の中に服が売っている場合でも同じではないでしょうか。僕が見に行くのはあくまでも服であって本ではない。

雑貨や文具でも同じ。結局彼らは「本ではないものを」見に、あるいは買いに来ている。そこに服(文具・雑貨)があるからお店に足を踏み入れたのであって、「本があるから」ではない。結果としてそこに「本があった」だけで、「本屋に行った」という見た目的な行為は同じでも、持つ意味合いは完全に異なる。

 

ショッピングモールというワードに沿って考えてみる。

「ついで買い」を目指した書店のつくりは縮小化されたショッピングモールと言ってもいい。

書店というショッピングモールの中に本のテナントや文具・雑貨のテナント、CD・DVDのテナントなどが入っている。さらにそれぞれ、本なら文庫・コミック・実用・人文・雑誌などというジャンルに分かれる(服屋がメンズ・レディース・キッズに分かれさらにその中でも世代や雰囲気、用途に分かれるのと同様)。

ひとは書店=モールの中を、目当てのものを目指して移動する。

 

そう考えると、「服」あるいは「赤ちゃん用品」をショッピングモールに買いに来たひとが、ついでに書店に寄るだろうか。という問いが生まれる。いや、疑問か。

本を日常的に買うひとならもちろん寄るだろう。じゃあそうではないひとは?

確かにそこに(ショッピングモールであれば)書店が、あるいは(書店であれば)本が存在している。でも彼らが求めているものが書店あるいは本ではない場合、それはただ「在る」だけで、それ以上の意味はないのではないか。

 

とすれば、「ついで買い」というものは非常にレベルの高い試みではないか、という答えが出る。少なくとも「本が目当てではないひと」「本を日常的には買わないひと」に「ついでに本を」買ってもらう、という場合には。

つまり、「とんでもないほど魅力的」でなければ本を手にとってもらえる可能性はないのではないか。

 

 

本を本気で売りたいのであれば、いまの多くの併設店は生ぬるい。本が売れないから「とりあえず」ほかの粗利のいいものを売っとけ、というようにしか見えない。そして「ついでに本を買ってもらえればラッキー」ぐらいに思っているのかもしれない。

 

残念ながらそれは完全に目論見違いだ。なんどもいうが、「ついでに」買ってもらうには「とんでもないほどの」惹きつける力がなければいけない。でも「とりあえず」置いているだけのモノにそんな力はない。正確には、「モノには力があっても、それをひとが生かせていない(どころか殺している)」ことになる。

そしてそういう生半可なお店は、本好きのひとには見限られる。だってつまんないもん。

そうやって中途半端な併設店は本好きには見限られ、そうではないひとには本を買ってもらえず、本以外の併設したモノは本職に負ける、という未来が待ち受けている。

 

「ついで買い」や併設店がすべて悪いというのではない。やるならちゃんと軸を持って、誰に対してアピールするのか、何を売りたいのか、そういうのを明確にして、「本気で」やらないといけない。そういうことが言いたいのです。

 

本好きをターゲットにするなら、キワッキワの棚を作って、その上で最上の「本以外のモノ」を置く。

本好き以外のひとをターゲットにするなら、最上の本以外のモノを丁寧にセレクトして、かつ「見た目だけで」惹きつけられるような力を持った本を置く。

(この観点からすると版元も努力が必要ですね。視界に一瞬入っただけで気になって手を伸ばしてしまうような装丁を考えないと)

 

 

まとまりもなければ明確な答えもないんですが

こんな感じです。

とりあえず、最初に提示した細分化のそれぞれに対する最善の体系・方法を考えていくしかないかと。わかんないけど。